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何者かになりたい 僕の人生のゼロ地点~前生徒会長の駆け抜けた青春~

 私にとって生徒会会長職はとても特別なものです。私は中学1年生のときに初めて生徒会役員に立候補してから中学、高校にて2度役員職を経験し、高校2年生でようやく生徒会会長に就任することができました。会長になりたいという思いは、初めて立候補した時からあり、ずっと憧れでした。このような思いをもったきっかけは、何者かになりたいという漠然とした気持ちからでした。それを出発点として私の青春ともいえる生徒会活動が始まったのです。

R5強歩大会より

 念願の生徒会長に就任した時はすぐ後に行事を控えていたたため、慌ただしいスタートでした。自分以外の役員たちと信頼をつくる、彼らの得意不得意と仕事への思いの把握、彼らが自分らしさを発揮できるように環境を整える。これを会長の何よりも大切な仕事と私は考えていました。この考えは今でも変わっていませんが、これらを成し遂げるのは並み大抵の努力では不可能だと私はすぐに悟りました。生徒会に集まったとはいっても、思考も能力も異なる人間ですから、自分の伝えたかった事が違う受け取り方をされるということも、しばしばありました。この壁を乗り越え、仲間とコミュニケーションを進める方法は『自分を少しずつ相手に知ってもらいながら、相手を少しずつ知る』です。「この人はどれくらいまで近づいてもいいのか?」、「この人は自分の何に興味があるだろうか?」など、信頼を深めるには相手を受容する心と自分をさらけ出す勇気が必要だと、私は会長職をしていく中で学びました。

R4 体育祭にて

 次に、私が衝突した壁は、生徒の皆さんとの情報共有の難しさです。生徒会が行事の企画・運営を行うとき、校内の使用可能なスペースの確保、感染症予防、設備や道具の有無、スタッフとして確保できる人数、監督をしてくださる先生方の人数など、様々な制約の中で計画をたてます。しかし、これら全ての制約の情報を生徒の皆さんに伝えることは難しく、生徒会の立案したものの要点のみを伝えることがほとんどです。それ故に生徒の皆さんとの間に齟齬が生じてしまうこともありました。この問題を解決するには、『情報は簡潔に少ない回数で重要な点を取り零さず伝える』ことが重要だと気づきました。情報というのは、ただただ多く伝えれば良いという代物ではなく、相手の求めていることに+αで伝えることが大切になります。これはこれからの人生で必ず役に立つ教訓だと私は思っています。

R4 球技大会より

 最後に私が生徒会活動をしてきた中で気づいた一番大切なことを書きたいと思います。それは『人と人はまったく異なる性質をもつ存在だからこそ尊い』ということです。この言葉は一見、綺麗事でありとても安っぽい表現に思えるでしょう。私も生徒会を経験していなかったら、恐らくこの言葉に聞く耳を持たなかったです。私は生徒会活動をしてきた中で多くの人と意見交換をしたりアドバイスをいただいたりしました。その中には私の考えとは真逆のものもあり、当初は自分の考えやこれまでの努力を認めてもらえないと感じたこともありました。しかし、このような経験を積み重ねていくうちに、それらの意見やアドバイスによって自分の考えや行動が磨かれていくのを実感していきました。1人で熟考している時点で切り捨てたはずの選択肢に実は活路があったり、未完成だと感じていながら完成へのアイデアが見つけられない時に新たな視点を獲得できたりと、私とはまったく別の情報を持って世界を見ているからこそ私には出せない発想をたくさんいただきました。以上のことから、私は自分とは全く異なる性質の人が周りにいたからこそ、1人では辿り着けなかった精神的な成長を叶えたのです(もちろん、私はまだまだ未熟者ですが)。ただ、現実的な話をすれば、自分と異なる考えや思想を受け入れるというのは、実はとてつもなく困難なことです。初めて他者の存在を自分の内側に入れた時、それはまるで毒のように飲み込み難いでしょう。しかし、それを実行した人は気づくのです、相手の存在が自分の精神を大きく成長させていることに。これは他者を受け入れるという試練を乗り越えた人のみが味わうことのできる感動だと思います。故に、その感動を求めて、私たちは互いに全く異なる個性を得て生まれ、唯一無二のバッググラウンドをもって1つの場所に集うのです。

R5対面式にて

 以上の他にも会長職をした中で得た経験はあるのですが、ここでは割愛させていただきます。これらの多くの貴重な経験から、私は最初に書きましたように『何者かになりたい』という願いのスタートにようやく立てたのだと思います。自分を知り、ようやく人生のゼロにやってきたのだと。生徒会会長になって本当に本当に良かったです。
 私は生徒会会長をした中で数えられないほどの人に支えられてきました。支えていただいた皆様への感謝は尽きることはありません。私の誇りの相馬高校のさらなる発展を祈念いたしまして、生徒会会長 小谷津 陽色の引退の言葉とさせていただきます。

R4生徒会メンバーと最後の集合写真。みんなありがとう!