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今更ですが

 四月十日に行われた入学式の式辞からの抜粋です。

 ただいま入学を許可された新入生の皆さん、入学おめでとう。本校は、今年で創立百二 十五年を迎え、「克己」と「進取」の精神を継承し、豊かな人間性の育成に努める福島県を代表する伝統校であります。これまで二万余名の有為な人材を輩出するとともに、近年に おいては 福島イノベーション・コースト構想のトップリーダー育成校に指定され、東日本大震災からの復興・再生に寄与する人材の育成が期待されています。皆さんの心は今、 これから始まる高校生活への大きな期待と、新たな世界に臨む緊張感とで溢れていることと思います。
 新入生の皆さんに、ここで二つのお話をします。 新入生の皆さんも、これまで、多くの困難を体験してきました。幼い頃の東日本大震災を始め、令和元年の水害や、相次ぐ福島県沖地震など、この相馬の地も、多くの災害に見 舞われました。みなさんの三年間の中学校生活も、新型コロナ禍により、学業も部活動も学校行事でも、思うようにはならない生活が続きました。みなさんは数々の困難を、多くの方々に助けられながら乗り越えてきたことと思います。 しかし、これから始まる高校生活においては、皆さん自身が、自分の夢を叶えることが できる高校生活となるよう、先生方や友人たちと協力しながら、コロナと共存した新たな 生活様式を自ら創りあげていかなければなりません。これからも、自然災害や感染症など、 我々の前には数多くの困難が待ち受けていますが、私たちはそれを乗り越え、次の時代へと社会を受け継いでいかなければなりません。それが、これまで数多くの災害を経験した 我々の責務です。その時に、心の支えとなるのは、本校の校訓である「至誠」であります。 何事にも真心を尽くしてあたり、誠心誠意を尽くすという意味です。この至誠の言葉を胸 に、いかなる困難をも乗り越えるたくましさを、この三年間で身につけてくれることを期 待します。
 また、私は春に校長として着任するときに、生徒の皆さんに度々お話しすることがあります。 私は、南相馬小高区の生まれです。小高には、震災後の十二年間、誰も住む人のない私 の家がありますが、毎年早春に蝋梅という黄色い花が咲きます。まだ春とは名のみの冷たい空気の中、ガラス細工にも似た半透明の花弁を持つ小さな花が咲きます。今はほとんど人が訪れることのない庭で毎年花をつける蝋梅の姿を見て、私はこう思います。どんな状況に置かれようとも、また誰も見ていなくても、私たちは人として正しい行いをしなければいけないのだ、人として凛とした誇りを持って生きていかなければいけないのだ、この 花はそう教えてくれている、私にはそう感じられます。 新入生の皆さんには、「至誠」の言葉を胸に、どのような状況におかれても、この花のように、常に礼儀をわきまえ、自分の良心に従って行動する、人としての誇りをもった高校 生活を送ってくれるよう希望します。

 式辞で触れた小高の「蝋梅」の花です。

2月頃の写真です

 4月から小高に住み始めました。毎朝、5時頃に鳴き出す雉子の声で目を覚ましています。今朝も、丘の上から雄の雉子が私を見下ろしていました。新参者の出現に警戒しているのかもしれません。


 ところで、本校の校長室前には、旧制中学校第一回卒業生総代 折笠晴秀氏の答辞が飾られています。

自分の悪筆が恥ずかしくなります

 「春光駘蕩として東風西山の雪を融かし」で始まる格調高い文章に、「これが高校生が書くものなのか」と驚くばかりですが、「今世紀は實に東奥人士の大に闊歩雄飛国家に盡すべき時なり」と、新しい時代を切り開くのは自分たちだとの気概にも溢れています。福島県の、特に浜通りの高校生には、この心意気が必要でしょう。
 ぜひ、生徒の皆さんも保護者の皆さまも、ご一読ください。


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